よくあるカップルの形態に「美女と野獣」というのがある。なんでこんな美人が野獣のような男とカップルになっているのか、という驚きといらだちとねたみがこもった呼称だ。
だが、野獣ならまだいい。野性的で男性的で逞しさを備えた男なら、顔が獣(けもの)でも許せる。いや、むしろそのほうが魅力的でさえある。体がシュワルツェネッガーなら、顔はキアヌ・リーヴスやジュード・ロウではなくてやっぱりシュワルツェネッガーかシルベスター・スタローンであってほしい。ハビエル・バルデムやダニエル・クレイグでもいい。
野獣どころか、デブでぶさいくで、どう見てもつまらないサラリーマン風の男と連れ立っているフランス人(たぶん)美女がいる。身長150センチ強で小柄ながら目のぱっちりした色白美人で、歩道を歩く姿は遠くからでも目立っている。
出勤の途上、ときどき一人で歩く姿をみかけるようになったが、ある日、そのサラリーマン風ブサイク男と連れ立って同じ歩道上を歩いてきた。まさに美女とブ男!どうしてそんな男に!と叫びたくなるのを抑えて静かにすれ違った。
蓼(たで)食う虫も好き好き、なんだよなあ女という生き物は。謎は深まるばかりである。