細面の顔に鼻ヒゲ、黒縁めがね。チリチリした長めの銀髪をきっちり後ろになでつけ、長めのもみあげでバランスを取っている。歳は70過ぎと見た。
「自分なりの格好よさをずっと追求してきたのじゃよ、わしは」そんな心の声が聞こえてくる。骨董品屋の主人に違いない。
「骨董品屋という商売はそう簡単なものではないんじゃ。なぜなら、古びたものを扱えばそれで商売になるというわけではないからじゃ。古びていながら価値がある。それを骨董品と呼ぶ。古いだけなら中古品でしかない。新品のときより価値が増していなければならない。それがポイントなんじゃ。
もともと高価なものだった品はそりゃ、材料も加工も仕上げもしっかりしていて骨董品になる条件を備えている。しかし、それだけで骨董品になれるわけではない。
肝心なのは使ってきた人、家にある。価値ある品を大切に使い、子や孫に伝えていく。子や孫も大切に使って次代に伝える。その繰り返しが品物に価値を付け加えていく。つまり使う人の心が品物の価値を高めていくというわけじゃ。わかったかのう、そこのお若いの。
わしはこうして電車に乗っているときも読書を欠かさない。知識はものを見る目を肥えさせる。わしはそう信じている」
ーおみそれしました。