もう何年その女を見かけてきたのだろう。10年近く前からだろうか。通勤電車に乗るといつも同じ車両になる。乗り込む前にホームで並んでいるときから一緒だから、自然と観察対象となる。
別にエロい目的ではない。とても若いのにどうしてこんなに仏頂面なのだろうという純粋な興味である。(やっぱ悪趣味?そりゃそうだ。このコラム自体、極めて悪趣味だから) はじめて見たのは、その女がおそらく20歳代前半のときだ。色白でスタイルが良く長い黒髪をすっとなびかせている。ツンとした雰囲気を漂わせるいわゆる美人タイプなのだが、いかんせん仏頂面。一重まぶたの目を油断なく光らせて周囲を見渡す。面長の顔は肌もきれいで申し分ないのに、いかんせん仏頂面。ちょっとでもにこやかな表情を浮かべれば親しみやすく、可愛らしくも見えるのに。残念なのだ。 そんな残念な状態のまま10年が経った。すでに30歳代に突入したことだろう。このままずっと仏頂面を貫くつもりだろうか。
きっと事務系のOLだろう。神戸のしっかりした家庭の長女として生まれ、女子大を出て地元有名企業に就職した。まじめに働き、貯金もある。しかし、男にもてない。
もったいないことである。嘘でも良いからにっこりと微笑めば、男がわんさか寄ってくるのに。嘘でも良いから仏頂面だけ卒業すれば、もてもてなのに。
残念である。