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執筆者の写真作家 龍村暁

いつも上機嫌な外国人女

 電車の車内アナウンスは事務的なものだが、もしあいそたっぷりだったら、と思ったことはないだろうか。そんなアナウンスなんかありえないとの声が聞こえてきそうだが、実在する。  神戸市中心部と北部を結ぶ神戸電鉄の車内放送だ。日本語に続いて英語のアナウンスが流される。英語のアナウンスを担当している外国人女性の声がこのうえなく上機嫌なのだ。アナウンスを訳すととこんな内容だ。

「次は新開地。阪急、阪神、山陽にお乗り換え下さい。神戸電鉄をご利用いただきましてありがとうございました」  まったく事務的な内容なのに、実に楽しげでウキウキした声なのだ。聞いているうちに体がもぞもぞしてきて、「何がそんなに楽しいんですか」と聞きたくなるほどである。  アナウンスの外人女性はよほど電車が好きで、録音の間もウキウキした気持ちが抑えられなかったのか。神戸が好きでたまらないのか。どっちかわからないが、とにかく毎朝のどろんとした頭にさあっと新鮮な空気を流し込んでくれる。本当にありがたい声なのである。  きっとアメリカ出身の35歳。背が高くて鼻も高い。ただそばかすが多くてあんまり美形ではないのが残念だ。兵庫県三木市の英語教師として2年間勤めたあと、神戸市内にある地元企業に就職し、日本人男性と結婚した。小学校に通う男の子を大事に育てている。末永くお幸せに。

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