玉のように、もしくは珠のようにつるりと光っていて、汚れがない可愛らしさを身に着けた女がいるものである。そういう女はたいてい小柄で、肉感的でなく、ファッションもセンスは良いのに派手さがなく、満員電車の中で人込みに埋もれてしまう。
神戸のポートライナーに友人の女と一緒に座っていた。20歳代前半にしか見えないが、実は30歳近いかもしれない。小柄でつるりとしているから年齢がよくわからない。黒髪を後ろでまとめ、広く形の良い額を丸出しにしている。細くすっとした鼻の下にこじんまりした口があるのだが、大きな前歯が隣の友人と話すたびにぴかっと光る。体の中で大きいのはその前歯とぱっちりした二重まぶたの目だけである。
30歳代後半の友人と連れ立っているところを見ると、きっとポートアイランドの職場から帰るところなのだろう。地味なクリーム色のシャツに黒いパンツ。遊びに行った帰りとは思えない地味さである。ポートアイランドには医療産業都市があり、医科学系の会社、施設が集積している。あの京コンピューターもある。終点、神戸空港駅のひとつ手前、京コンピュータ前駅の前にある(あたりまえか)。
先端医療の会社で地道に事務職をこなしている。理系の社員がほとんどだから職場に色恋沙汰がない。よく見れば真珠のように美しく、可愛らしいのに男が寄ってこない。性格が地味なせいだろうか。不思議である。
いかし、なんだかんだいって良い結婚相手が見つかって、何の不自由も心配もなく人生を送っていくのだろう。生まれてから死ぬまでなんの苦労もなく人生を送る人間なんて実はごまんといる。苦労などしないにこしたことはない。特に女子には不要である。
玉子もしくは珠子さん、君にも幸あれ。