top of page

私、ニホンジンと言い張る女

執筆者の写真: 作家 龍村暁作家 龍村暁

 握りこぶしほどの大きさしかない顔に長すぎる手足、栄養失調寸前のような細さで超ミニスカートをはいている。立ったり座ったりするたびに、ずり上がったミニスカートを引っ張り下ろす動作が面倒くさそうだ。  色白で顔の造作からするとアジア人、それも日本、中国、韓国、台湾のどれかであることは間違いない。しかし、「私、日本人」という主張には承服しかねる。なぜかというと、日本語が完全マスター寸前のように聞こえるからだ。

 「ワタシ、ニホジン、オトサンモ、オカサンモ、ニホジン」というしゃべり方なら外人に決まっている。そんな話し方ではなく「私、日本人ですよー。お父さんもお母さんも日本人ですよー」だからややこしい。日本語としては正しい。イントネーションと口調のたどたどしさが日本人ではない。

 そのうえ、まだ20歳代前半なのに、おじさん世代の海外のロックミュージシャンにやたら詳しい。ディープパープルのメンバーですでに他界したのは誰だとか、レッドツェッペリンのヴォーカルは誰だとか、以前「この世の不思議」で紹介したワンオクロックのヴォーカル、タカの歌唱力が凄いとか、両親は誰(森進一と森昌子)だとか、音楽関係の話題には古いことも新しいこともすべて応対する。日本人の若いホステスではありえない知識の広さと記憶力である。  ユウちゃんだったか、レイちゃんだったか名前は聞いたが、忘れた。日本人でも外人でも使える名前だったことだけ憶えている。二時間近くの接客中、「私、日本人ですよー」のフレーズを何度聞いたことか。それは、我々おじさんグループが「本当に日本人?」と何度も聞くからだ。我慢強さからしても日本人ではない。きっと外人だ。(写真と文に関連はありません)

© 2016 by Akira Tatsumura. Proudly created with Wix.com

ゆがんだ真珠表紙完成 jpeg_edited
青い塔第3版電子表紙JP_edited
森徳堂ロゴ月黒
THE OROCHI表紙8_edited
ノンカイ電子版表紙4 B4_edited
bottom of page