美形というより、可愛い系のインド娘である。通勤電車に乗り、長い座席の端っこで一心不乱にスマホをいじっている。スマホで顔の半分が隠れていても充分分かるほどの美人だ。
インド人らしい小麦色の肌に真っ直ぐな黒髪。ヨード卵のようなツルッとした小顔にパッチリした目、形の良い小ぶりの鼻、小さな口。それらがうまく配置されている。
旅行者ではない。スーツケースがないからすぐにそれと分かるが、服装からも類推できる。
白い半袖ブラウス、薄紫のスラックス、素足にはいたヒールのない白い靴、膝に載せた黒いトートバッグ。どれもが日本の百貨店で手に入るファッションだ。
関西に住むインド人ビジネスマンの娘に違いない。それも金持ちのインド家庭だ。その証拠に、通勤電車に揺られるような日本の庶民には興味がない。
混みあった車両の中でなんの遠慮もなく足を組み、電車を降りるまで1時間以上もスマホをいじり続けるふてぶてしさ。日本文化に慣れ切った態度である。日本で生まれ育ったのだろう。
裕福なだけでなく、インド社会でも階級の高い層に生まれ、持って生まれた美しさもあって鼻っ柱の強い性格が形成されたのだ。
肩にかかるセミロングの髪を後ろに流し、ときどき前髪をかき上げる。その間もスマホ画面から視線を外さない。社内の様子や外の景色には一切関心がないのだ。
目的の駅に着いて初めて顔の前からスマホを下ろし、立ち上がった。小柄な体型なのに、目立ってしまう。
男たちの視線を集めていても、そんなことどうでもいい。無表情に降りていく。
「今日もたいくつな授業が待っている。あーあ」
女子大生の心の声が聞こえてきた。
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